矢田のばあちゃんの違反を防止するには、ここらで断固たる措置を講じる他はなかった。結局、彼女の身体に──その腰帯の後ろ側に──括りつけた紐をベッドの脚に結わえ、床には自由に降りられるが、廊下にまでは出られぬようにしたのである。まるで室内で飼われる犬みたいであったが、ちょうどその犬が糞しを与えられるように、矢田のばあちゃんもプラスチック製の簡易便器を与えられた。ベッドの脇の狭くるしいスペースで用を足すのは中々の難儀で、慣れるまで彼女はずいぶん苦労させられた。何度かは粗相をして着物や下着の裾を汚してしまい、その汚れのことでも、しつこく気に病まなくてはならなかった。
ところが、それよりももっと悲しかったのは、矢田のばあちゃんのこの簡易便器が、意外にも周囲のひんしゅくを買ったことであった。というのも、他の五人の垂れ流しの患者の糞便の臭気には慣れっこになっていたというのか、そのほうは臭気というほどの臭気でもなかったというのか、健康な矢田のばあちゃんの用便中に立ちこめるにおいばかりが、急に気になりだしたからである。出入りの看護婦や付き添いの中には、あからさまに「くさい、くさい」と言う者もいて、彼女は途方にくれてしまった。そんなに言われたって、便所に行かせてもらえんのじゃから仕方がない。歯も丈夫で内臓にも何の故障もない、食欲旺盛な彼女が、排泄もまた活発なのはどうしようもないことであった。
ところが、それよりももっと悲しかったのは、矢田のばあちゃんのこの簡易便器が、意外にも周囲のひんしゅくを買ったことであった。というのも、他の五人の垂れ流しの患者の糞便の臭気には慣れっこになっていたというのか、そのほうは臭気というほどの臭気でもなかったというのか、健康な矢田のばあちゃんの用便中に立ちこめるにおいばかりが、急に気になりだしたからである。出入りの看護婦や付き添いの中には、あからさまに「くさい、くさい」と言う者もいて、彼女は途方にくれてしまった。そんなに言われたって、便所に行かせてもらえんのじゃから仕方がない。歯も丈夫で内臓にも何の故障もない、食欲旺盛な彼女が、排泄もまた活発なのはどうしようもないことであった。











